地球温暖化防止を図りながら美味しく食べられる肉の開発

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ハーバード大学の研究チームは、実験室で育てたウサギと牛の筋肉細胞を作成することに成功した。
実験室で育てた肉はペトリ皿からディナープレートに移動する際に筋肉を獲得できるのである。
実験室で生成された肉は、本当の動物の肉の質感と同等になるという。

ハーバードジョンA.ポールソンスクールオブエンジニアリングアンドアプライドサイエンス(SEAS)のチームでは、食品に再生医療の技術を応用させたのである。
具体的には実験室で育てた肉のスケーラビリティを変えることができる食用ゼラチン足場の作成に成功した。

動物の肉というのは主に骨格筋繊維で構成されているため、成長するためには構造体に付着する必要がある。
研究チームでは遠心力を利用することで特定の形状とサイズの長いナノファイバーを紡糸した、浸漬回転ジェット紡糸(iRJS)を用いることで、ゼラチンから筋肉が成長するための構造体を作成する試みにトライしたのだ。
ゼラチン繊維は細胞外マトリックスに似ており、筋肉細胞の成長を促進させるという。
チームは最終的には定義済みのテクスチャー、味、栄養プロファイルを備えた肉を、手頃な価格で設計したいと開発に取り組んでいる。

 

綿菓子から着想を得た、繊維生産システムである「液浸回転ジェット紡糸」によって生産されたゼラチン繊維。 これらの繊維は、細胞を成長させるための「ベース」を形成する。自然の筋肉組織の細胞外「接着剤」を模倣し、組織を結合することで、食肉の質感を再現する。

肉は家畜をのびのび育てて得たほうがおいしいという従来の常識を打ち破り、なぜ、研究室内で肉を製造する開発を目指しているのだろうか。
それは、世界的に深刻度を増している地球温暖化の防止と大きく関連している。
家畜の飼育は、実は世界中の温室効果ガス総排出量の14.5%を占める環境には優しくない方法なのだ。

一方で、食肉の世界市場は1.8兆米ドル以上の市場規模を持つ、経済的な価値が高い市場である。
そして、我々人間が消費するカロリーの3分の1は肉製品から得られており、現代のアメリカ人は平均して毎年220ポンドもの肉を食べているのだ。
これは1990年の167ポンドから上昇傾向にある。

世界的には人口が増大傾向にあり、かつての途上国などが経済成長を遂げて、食が豊かになるにつれ、食肉への需要は今後も増えることが予想される。
需要に応えて家畜の生産を増強させるとするならば、地球温暖化はより加速していくことだろう。
そこで、人間が生きていくうえで欠かせない食を維持し、消費習慣によってもたらされる有害な環境被害を抑えていくには、家畜と同じ味や食感が楽しめる代替品の開発が必要というわけである。

これまでも多くの実験室で食肉が育てられ、味わいや食感では代替品として有望になったものの、価格と規模の点で製品化や市場での販売は難しい状態だった。
SEASチームのゼラチン足場技術が応用できれば、筋肉細胞の急速な成長を可能とし、求めやすい価格と規模を実現することが期待できる。
クララの卵代替品やメンフィスのミートボールなど、価格競争力のある多くの研究室で生産された製品は、植物ベースの製品をアンダーカットすることになろう。
実験室から生み出された新たな食品技術の進歩により、栄養成分や風味、テクスチャーをカスタマイズできるようになる日は近い。

参考:Lab-grown meat gains muscle as it moves from petri dish to dinner plate.

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