自分の足のように歩きやすくなる義足の誕生

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ETHチューリッヒ、ベオグラード大学、フライブルク大学の研究チームは、膝上肢切断者が再び感覚を抱かせる義足を開発し、より確実な足運びをしながら、義足特有の幻肢痛を排除することに成功した。

研究チームは義足の膝と足底にセンサーを埋め込むことに加えて、装着者の太ももにある残りの神経に4つの神経内電極を埋め込むという新たな方法に取り組んだのだ。
そして、補綴センサーのデータを電気信号に変換するアルゴリズムを用い、装着者に十分なトレーニングをしてもらうことで、装着者がこれらの信号をリアルタイムの感覚データに変換することに成功したという。
膝の動きや地面に触れる足の動きの感覚が感じられるようになるというから画期的である。

実際に装着をしてもらい、3ヶ月利用してもらったところ、従来の義足に比べて身体的にも精神的に負担が少ないことが明らかになった。
2人の治験者のうち、1人は幻肢痛の8割が減少したといい、もう1人は試験終了までに完全に痛みがなくなったと報告している。
タッチを感知できる義足の誕生で、足を切断してしまった人たちがより歩きやすくなり、快適な日常生活を送り、スポーツなどにもチャレンジしやすくなることが期待できる。

 

アメリカでは毎年、約185,000の下肢切断事例が発生している。
義足を装着してもこれまでのような歩みは難しいうえ、幻肢の痛みに耐えかねる人も少なくない。
義足を装着している切断者は心臓への負担がかかりやすく、義足を使っていない健常者に比べて2.2倍もの死亡リスクにさらされているのだ。

今回の研究開発により、膝より上の切断者の義足にセンサーを埋め込む最初の試みが実現された。
モーションデータ要件が高い膝下の場合よりも、いっそう難しいケースであり、偉業を成し遂げたと高い評価がなされている。
義足と装着者を接続するセンサーをはじめ、AIによる機械学習や計算技術の進歩などを通じ、義足でありながら、まるで自分の足であるかのような感覚で、つらい幻肢痛からも解放されて日常生活が送れるようになる。
この画期的な開発が実用化されれば、現在、義足を利用している人たちに希望をもたらすうえ、下肢切断の選択を迫られている人の決断を後押しすることになるだろう。

下肢切断の事例では事故によるケースだけでなく、病気が原因のケースも少なくない。
下肢を失うことと交換に病気の再発や悪化を予防できるケースもあるのだ。
だが、下肢を失うことによる恐怖やその後の生活の不安から、踏み切れずにいる方も少なくない。
自分の足のような感覚で使えて、心身の負担も軽減できる義足が生み出されれば、決断も下しやすくなり、病気の再発や深刻化を抑えることにつながるかもしれない。

また、近年はパラリンピックをはじめ、義足でもハードなスポーツに取り組む人が増えている。
競技用の義足はより強度で柔軟性を求められるが、タッチの感覚が得られる義足が応用できれば、より競技パフォーマンス向上に役立つことだろう。

参考:A prosthetic leg that can sense touch makes it easier for amputees to walk.

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