銅生産プロセスに機械学習モデルを導入

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銅生産の上場企業として世界最大となるフリーポート・マクモランは、AIの導入により銅の年間生産量を90,000トン増加させると発表した。
資本投資を最小限に抑えるために、経営コンサルティング会社であるマッキンゼーと共同で回収性の向上と生産の最適化を図る。

フリーポート・マクモラン(Freeport-McMoRan Inc.)は、1987年に設立された鉱山会社だ。
世界最大級の銅鉱山であるインドネシアのグラスバーグ鉱山をはじめ、大規模な長期採掘が可能な銅・金・モリブデンの鉱山を各国で運営する大企業として名を知られている。
ほかにもメキシコ州の鉱山やペルーのセロ・ベルデ鉱山、チリのエル・アブラ鉱山なども運営し、世界的に実績も信頼もある企業といえるだろう。

一時は原油や天然ガスの開発生産にも力を注いでいたが、現在ではそちらの事業は規模を縮小している。
2011年から2015年までは銅価格が下落し、業績悪化によりフリーキャッシュフローの赤字が続いたことも事実だ。
このとき同社は設備投資を抑制し、セロ・ベルデ鉱山の能力を増強させるなどして生産効率の向上に努めた結果、銅11 ポンドあたりの生産コスト・販売コストの大幅圧縮にも成功している。

2017年には銅市況も回復し黒字を確保したが、鉱山の銅埋蔵量の減少や新規鉱山開発の失敗、銅スクラップ活用などによる銅需給の低迷などで銅生産量は減退の一途を辿ってきた。

ここで同社は、従来の多大な設備投資による鉱山開発を抜本から見直す策に転じる。
アリゾナ州にあるバグダッド鉱山のセンサーからデータ統合し、処理pHレベルを調整して銅をより多く回収する生産性の最適化を図ったのだ。

従来の手法では、大規模な生産バンプには約15〜20億米ドルの設備投資を必要とする。
同社はこうした設備投資の代わりにAIの導入による生産性の向上に方向転換を果たし、そして一定の成功を見たといえる。

 

AIの学習能力を活かすことで、鉱山開発においても無駄な設備投資をカットし、高い経済的価値を生み出せることを同社は世に知らしめた。

ご存じの方も多いだろうが、現在各国では銅に限らず現在世界中で鉱山生産の不調が続いており、予想をはるかに下回る鉱石加工量により輸出がキャンセルされるなど、鉱山開発の課題が重くのしかかっている状況だ。
採掘されたとしても銅鉱石にヒ素含有量が多いケースでは、加工する焙焼炉の稼働率にも影響を受ける。
焙焼炉頼りになる場合技術面でのトラブル率も高くなり、精錬銅生産では大きな打撃を受けるだろう。

そこで急務となっていたのが、鉱山で質の高い銅を採掘する技術である。
いかにして無理・ムラ・無駄のない採掘を可能とするか、あらゆる経営者・技術者が頭を悩ませ、取り組んできた難題だ。

現在No.1 の銅需要国は中国だが、銅は昔から変わらず生活用品から宇宙開発に至るまで、産業界にはなくてはならない鉱物だ。
近年では採掘される銅鉱石中の不純物濃度が増加傾向にあり、業界全体の重大な課題となっていた。

本課題に取り組む中で、同社はAIという新しい切り口で、ヒ素などの不純物を排除する技術をはじめ、質の高い銅鉱石を効率的に採掘できる技術を確立したといえる。
世界No.1 の銅生産企業であるフリーポート・マクモランのソリューションは、鉱山業界の難題をIT技術で塗り替えていく最初の突破口となり得るだろう。
鉱山開発の在り方がITで変わる、そんな時代がすでに始まっている。

参考:Freeport turns to artificial intelligence to raise copper output by 90,000 tonnes

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