ブラックホールの存在が猛スピードで新星を生む可能性をNASAが発見

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NASAは天の川銀河の約500倍という驚異的なスピードで成長する超大質量ブラックホールを発見した。
場所は約58億光年離れたフェニックスクラスターの中心で、ハッブル宇宙望遠鏡とNASAのチャンドラX線天文台が取得したデータから天文学者チームが観測に成功したものだ。
チームは、ブラックホール周辺の太陽100億個分にも相当する、冷却ガスも同時に観測している。

 

フェニックスクラスターは非常に明るい銀河団であり、2012年に発見された当初から、星の密度が最高クラスでありX線が最強の銀河団とされている。
この銀河団は現行の説とはまったく合わず、本当に例外的で独自性の強い銀河団だと確信されるに至った。
質量が非常に大きく、銀河系を含む銀河群の総質量でさえこの銀河団の0.1%程度にしかならないといわれているから、そのスケールの大きさは計り知れない。

この銀河団が天文学者たちを混乱させたのが、銀河団の中心にある銀河があまりにも活発に恒星を生み出すスターバースト現象を起こしているように見えたことだ。
中心銀河は年に740個以上もの恒星を生み出し、それまで年150個程度であった恒星形成ペースの記録を一気に塗り替える結果となった。

フェニックスクラスター内にあるブラックホールは弱体化しており、そこから噴出されるジェットはそれほど強力ではない。
実はそのほうが多くの恒星を形成するのに適しており、怒涛のようなスピードで星の誕生が見られる理由にもなっていると考えられている。

研究グループの一人であるカナダのウォータールー大学ブライアン・マクナマラ氏は、エネルギー粒子によるガス冷却とブラックホールの関係を「エアコンで冷やしている部屋の中で焚き火をするようなもの」と表現する。
星の苗床となるにはガス冷却が必要だが、エアコンをどれだけ効かせても中の焚き火を消さない限り室温が下がらないように、一般的に考えればブラックホールの存在は邪魔でしかない。

にもかかわらず、フェニックスクラスターの事例は、ブラックホールがまさに星の苗床となっていた事実を証明したのだ。
このことはブラックホールが新しい星の「排除」と「創造」、その両方でなんらかの役割を果たすことを示唆するといえる。

フェニックスクラスターの発見に至ったのは2012年のことだ。
今回研究グループは、ハッブル宇宙望遠鏡、カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群、チャンドラX線観測衛星を駆使し、2012年の観測時より大規模な詳細調査を行った。

調査の結果判明したのは、ブラックホールからのアウトバースがほとんどないこと、ブラックホールへ続くフィラメントに沿って、太陽100億個分の冷たいガスが存在していることだ。
年間太陽500個分の質量に相当する若い恒星が生まれていることがわかり、通常太陽1個分の天の川銀河団に比べれば怒涛のスピードである。

中央のブラックホールからはジェットが噴出があり、熱いガスの中に泡を膨らませているらしいこともわかったが、周囲を熱するには弱すぎると考えられる。
このブラックホールは銀河の質量に比べると小さいことが推測され、ジェット噴射と冷たいガスの蓄積が一つのサイクルを作り、同じことを繰り返し起こす過程で星が急速に誕生していると予測された。

つまりは、大きな目で見れば、ブラックホールこそが新しい星の誕生を手助けしているといえる。
遠くの銀河団を観測することで、これまで我々の銀河で起こったであろうこと、将来に起こり得ることを推測し、星や銀河の寿命を知る手掛かりになるであろう。

参考:NASA finds supermassive black hole birthing stars at “furious rate.”

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