見えなかったものが見えた宇宙での発見

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天文学者は宇宙を結びつける役割を果たす宇宙のウェブを初めて観測できたと発表した。
宇宙ウェブは遠く離れている銀河と銀河を結びつける接着剤として機能するもので、宇宙における最大規模を誇る基礎構造となる。

現段階で観察されている主要なモデルは、宇宙を横断するガスと銀河の大きな糸状のフィラメントとなっている。
これらのフィラメントはスーパークラスターとクラスターの糸を形成しており、まるでクモの巣のようになっているのだ。

ごく最近のことになるが、天文学者は欧州南天天文台の超大型望遠鏡を使用して、120億光年以上に離れた古代の銀河団の観測を行った。
その画像を用い、天文学者は特殊な機器を使用することで、SSA22銀河団内の水素から放出される光をマッピングした。
これによって、銀河を繋ぐ個々のガスフィラメントを見つけだしたのだ。

 

銀河どうしを繋ぐ接着剤のような役割を果たし、宇宙全体をクモの巣のように覆っている宇宙ウェブの考察と研究が深まっていけば、まだまだ未知の部分が多い宇宙モデルの解明に大きな飛躍をもたらすと考えられている。
ダーラム大学の天体物理学者であり、共著者であるミシェル・フマガッリは次のように述べた。
「今回の観測により、複数のフィラメントが伸びていることをはっきりと見ることができたことは、大変驚きである。フィラメントで形成される宇宙ウェブは、超大質量のブラックホールと銀河の形成を制御する役割を果たしている。明確な視覚的検証を提供するこの発見は、初期宇宙の進化を理解する上で大きな進歩をもたらすことであろう。」と興奮を隠せない。

これまでの観測と研究では、銀河と銀河の周りに高温のガスがあることはわかっていた。
銀河と銀河の間に存在している高温のガスは、銀河団を構成する個々の銀河よりも質量としては大きいこともわかっていたのだ。

だが、これまでの研究では見える物質の重力だけで計算すると、銀河とガスはあっという間にバラバラに散らばってしまうのだ。
そのため、銀河間に大量にある高音のガスよりも、さらに大きな質量を持つダークマターが存在するとずっと考えられてきた。
つまり、銀河やガスという見える物質をつなぎ止めている、見えない何かが存在するのではないかと考えられてきたのだ。

それが、今回の発見で銀河と銀河を繋ぐ接着剤の存在が明らかになった。
しかも、フィラメントという形で見ることに成功したのだから、天文学者や研究者たちがエキサイティングするのも無理はない。
見えない存在と思われていたものが見えたことで、銀河の形成方法に関する従来のさまざまな仮説の見直しや大幅な修正が必要となる可能性があるという。

銀河ほどの大きさのものが、ダークマスターなしにどのようにしてまとまっているのかを解明するのは困難を極める。
宇宙ウェブがそもそもどうやって形成されたかを解明することが、何よりも難しいからだ。
ともあれ、今回の発見でダークマスターのない銀河は、ダークマスターの存在そのものに疑問を呈してきた天文学者らにも新たな課題を提示した。

参考:Astronomers spot ‘cosmic web’ that sticks the universe together.

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