カーボンナノチューブに新たな光を与えた東大の研究チーム

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東京大学の科学者による研究チームはカーボンナノチューブを整列させる方法を開発した。

従来行われてきたようにバルク材料でナノチューブを製造すると、個々のチューブの配置は不揃いになってしまう。
そこで、チューブの熱特性を利用するためにはチューブを端と端を合わせる必要がある。
これを達成するために、研究チームでは制御された真空ろ過の技術を適用した。

その手法はカーボンナノチューブがその特性に基づいて制御できるよう、チューブの自然な自己組織化を引き起こす液体溶液と混合するというものだ。
次のステップとして、液体を真空で注意深く除去し、高度に整列されたカーボンナノチューブの薄いシートを残す。

このシートにはいくつかの並外れた特性があるという。
中でも最も重要なポイントは、一方向の熱伝導率を持っていることである。
シートがアライメントに対して垂直よりも、アライメントの方向へと約1,000倍の効率性で、熱伝導ができることを意味している。

つまり、カーボンナノチューブ材料が一方向にのみ熱を伝導する仕組みを使って、整列制御することに成功したのだ。

 

熱漏れは、電気技術者や回路設計者にとって大きな問題となってきた。
この一方向の熱伝導材料のメカニズムの解明と開発が進めば、大規模な冷却システムの必要性を軽減し、ナノスケール、たとえば、トランジスタのサイズまで最小化させることができるだろう。
ゲーム開発などはもちろんのこと、より効率的になった冷却システムは、コンピューターハードウェアエンジニアの設計に大きな新しい可能性をもたらすことが期待されている。

カーボンナノチューブという素材は炭素原子のみからなる材料でありながら、結合の幾何構造によって、金属であったり、半導体になったりするという独特の特徴を持つ。
扱いが難しい特徴があるのはもちろんだが、科学者や開発者にとっては研究・開発に活用するための物理的興奮と無限の応用の可能性を秘めている素材だ。

金属・半導体ナノチューブの分離や選択合成の技術はもちろん、今回のケースのように直径や巻き方の制御されたカーボンナノチューブの分離や合成、垂直配向膜といった配列を制御できる合成技術などを進化させていけば、想定外の工学的応用が生み出されると期待されている。

中でも、金属ナノチューブの性質を応用する技術としては半導体微細構造の金属配線やビヤ配線をはじめ、平面型ディスプレイのための電界放出電子源などにも適用が可能だ。
さらに走査型プローブ顕微鏡の探針や導電性複合材料、電気二重層キャパシターや透明導電膜をはじめ、今後の環境対策にも役立つニーズが高い燃料電池電極やリチウムイオン電池電極の補強剤、燃料電池電極や太陽電池電極への応用も期待できる。

電気伝導性・熱伝導特性・機械特性などに優れたカーボンナノチューブに、長くて真っ直ぐで、高密度という性質を引き出すことができれば、導電性付加や熱伝導性の向上はもとより、軽量高強度素材や電池電極の開発、センサー素子材料などさまざまな分野に応用が可能だ。

参考:A nanotube material conducts heat in just one direction.

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