AIが加速化させるかもしれない新薬の開発

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AIの新興企業のInsilico medicineは、トロント大学およびWuXi App Tecの共同研究者とともに、ある研究を行っている。
その研究とはAIを使用して、組織の瘢痕化を防ぐ可能性を持つ薬物の候補を特定するというものだ。

共同チームはわずか3週間という短い期間で、繊維症の重要なタンパク質を標的とした候補分子30,000個を、コンピューター化してデザイン作成したが、これには生成的敵対的ネットワークで知られるAIのサブセットを使用している。
これらの設計のうち、6個を研究室で合成した研究者は、最終的に臓器内に瘢痕化を蓄積する酵素、DDR1キナーゼを阻害できる可能性を持つ4つに絞り込み、新規化合物の候補リストを改良したのだ。

さらにマウスによるテストで最も有望な単一分子を絞り込むことに成功し、標的酵素に対して強力かつ明確に薬物のような性質を示すことを証明したのである。

 

この研究は、現在の新薬開発の工程を大きく変える可能性を秘めている。

現在、新薬の開発には10年以上の年月と、新薬の開発にあたって平均26億米ドルもの膨大な費用がかかっているのだ。
さらにフェーズI臨床試験に参加した医薬品候補のうち、10のうち9までが実際に患者に対して使われることがない。
つまり、10の新薬候補のうち、実に9つが新薬として認められることなく、葬り去れているのだ。
たった1つしか新薬として使えないという現実は、非常に効率が悪いといわざるを得ないうえ、薬を待つ患者からすると、絶望的ともいえよう。
今後もラボによる研究が必要なくなるわけではないが、AIならプロセスを大幅に早めることができる。
生成的敵対的ネットワークとAIが一緒になることで新薬開発に必要な時間と労力が大幅に短縮されるからだ。
さらに、時間と労力が短縮されれば、必然的に開発費用も大幅に削ることができる。
これまでの新薬開発の常識だった開発に10年以上の年月をかけ、それでも新薬として認められるのは10のうちわずかに1つだけという圧倒的不利な状況を、生成的敵対的ネットワークとAIが一緒になって働くことによって、新薬開発はまさに根底から覆され、新しい方法が確立されることになるのだ。
より多くの新薬開発に取り組むことができれば、新薬の種類は飛躍的に増えると考えられる。
現代の医療技術の進化をもってしても、原因は分かっているものの、それを治療するための薬の開発が追い付いていないという状況が変わるだろう。

対症療法のための薬による処置ではなく、根治のための薬があれば、それは病気を治すための治療となる。
そんな新薬が登場すれば、医療処置にも大きな影響を与えるのは間違いない。
外科的処置ではなく、投薬によって治る病気が増える可能性があるからだ。
しかも対症療法から根治へと働きが異なる薬のおかげで、これまではどうにもできなかった病が治ることになるだろう。

高齢化が進む日本においては、認知症の根治によって社会保障の負担が大きく軽減され、明るい社会になるかもしれないのだ。

参考:A Molecule Designed by AI Exhibits ‘Druglike’ Qualities

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