メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)から患者を保護するかもしれない遺伝子の特定

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デュークヘルスの研究者は抗生物質耐性ブドウ球菌感染と戦う患者の能力を高める遺伝子の特定に成功したと発表した。
研究チームは感染リスクが高い持続性メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)に焦点を合わせて研究を進めた。

メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)はほとんどの抗生物質治療に耐性があり、皮膚から皮膚への接触または侵襲的手技により感染する感染力の高いブドウ球菌の一種である。

研究チームで対象とした68人の患者のうち半数が持続的なMRSAを保有していたが、この遺伝子の作用により、そのうち半数が血流から感染を除去できたという成果を上げたのだ。
研究者チームによると、MRSAを含まないグループの62%が染色体2pのDNMT3A領域に遺伝子変異を有していることを発見した。
この変異は体の抗炎症性サイトカインIL-10応答を低下させるリスクがある。

過剰に活動することで組織の損傷はもとより、生命を脅かすリスクさえ観察されたのだ。

 

2017年だけでも119,000人を超すアメリカ人がブドウ球菌感染に苦しみ、その結果として約20,000人が死に至った。
高齢者に多い症状とされているが、実際には子供のMRSAの割合は1999年から2008年にかけて10倍に増えており、現在も増え続けている。
高齢者や子供も体力や抵抗力がないため、感染すれば重篤な症状に陥ったり、死亡リスクが高かったりするのが問題である。
MRSAの抗生物質耐性レベルが上昇し続けているため、一般的な細菌感染に対する代替療法を急いで開発する必要必要がある。

今回の研究成果に基づき、どのような人がMRSAにかかりやすいのか遺伝的要因を解明することができれば、研究者は抗生物質に頼らない画期的な治療法や感染予防法を開発することができるかもしれない。
ゲノムの研究はMRSAに有用であることが証明されており、今回の発見でさまざまな新しい遺伝子編集ツールがMRSAをはじめとする感染力が高く、治療が難しい病気と闘うための医療革新をもたらすことが期待される。

日本でも老人ホームや高齢者病棟などを中心に、MRSA感染が問題となっている。
日本でMRSA感染症を起こすのは、その多くが病院内にいる抵抗力のない患者だ。
たとえば、大きな手術を行ったばかりで体力や抵抗力が低下している患者、血管内にカテーテルが挿入されている患者、長期間の抗菌薬使用患者や抗がん剤使用患者をはじめ、免疫不全患者、未熟児も感染リスクが高い。
MRSAは接触伝播する性質があることから、MRSA患者と接触した医療従事者や介護者の手を介して、抵抗力の弱い他の患者に伝播するリスクが高くなっている。

MRSA肺炎や敗血症などMRSA感染症を起こす院内感染は何としても回避したい大問題であり、抵抗力の弱い患者にMRSAを伝播しないために手洗いを徹底させるといったルールが設けられている。
手洗いや衛生管理くらいしか防ぐ手段がない状態で、今回の発見は希望の光をさすと言えるだろう。

参考:Genetic mutation appears to protect some people from deadly MRSA.

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