激減するゾウを守るために

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コーネル大学を中心とする研究チームは、AIアルゴリズムを用いて、アフリカのゾウの追跡と記録を行い始めた。
ゾウは視覚的に追跡するのが困難であることが判明したが、コーネルの研究者であるピーター・レッジ部長は、熱帯雨林においてマイクをセットアップし、ゾウのコミュニケーションの兆候を聞くことを試みた。

ピーターレッジ部長とエレファントリスニングプロジェクトのWregeとのチームは、熱帯雨林を25㎢のグリッドに分割した。
次に、23〜30フィートのグリッド上のすべてにオーディオレコーダーをツリートップに配置する。
これによって、数十万時間ものジャングルサウンドの収集を試みた。
取得した音を収録したオーディオファイルをスペクトログラム、すなわち、オーディオファイルの視覚的表現に変換することでニューラルネットワークをデータに適用していく。

これによって個々のゾウから音を分離することに成功したという。

これらのアルゴリズムの結果は、パークレンジャーがジャングルパークにいるゾウの状況を正確に把握し、時間の経過とともにパーク内のゾウの動きを追跡することに役立つ。
さらに茂みに潜んで活動する悪質な密猟活動を積極的に防ぐことにも役立つと考えられている。

 

現在、AIは医学や財務計画、ロジスティクス、工業デザイン、ナビゲーションをはじめ、あらゆる分野で機械式や論理ベースのシステムのユースケースに適用され進化を遂げ続けている。
一方で、現代にあってもまだ構造化されていない環境、さらには動物と動物のコミュニケーションさえも理解するのに役立つことがわかってきた。

計算能力やセンサー、接続性の収束を通じて、ゾウのコミュニケーションを理解するプロジェクトで採用されたような方法が、複雑な自然の生態系と種のよりよい理解につながると期待される。この研究を通じて、人類にとっても大切な自然体系の保護や野生動物たちの保護、種の保存につなげることが期待されているのだ。

Elephant Listening Project の音響センサーは現在、地球上で最も高度な動物の音声監視システムとして、コンゴ共和国で大量のデータを収集し続けている。
Nouabalé-Ndoki National Parkや近隣の伐採地において、チンパンジーやゴリラをはじめ、絶滅危惧種のヨウム、落下する果実のわずかな音から人間が使うチェーンソーやエンジン、銃声の音まで収集可能だ。

もっとも、この装置を使って研究者らが求めているのは発見が難しいマルミミゾウの鳴き声である。
マルミミゾウの数は急速に減少しており、絶滅に歯止めをかけなくてはならない。
アフリカのマルミミゾウの個体数は2011年に100,000頭いたのが、40,000頭以下にまで激減している。

もっとも、この数を算出するには、密猟集団の確保や押収された象牙の数を数える労力が求められ、定期的に数を把握するにはコストが高すぎるうえ、聞き取り調査などの間接的な方法に基づくため、正確な数値とはいえない。
Elephant Listening ProjectのAIを通じて、労力やコストを減らし、正確な頭数の把握を通じて、密猟の予防なども促進されることが期待されているのだ。

参考:Elephants Under Attack Have An Unlikely Ally: Artificial Intelligence.

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