パラジウムの活用でより安心の癌治療を

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エジンバラ大学とスペインのサラゴサ大学の研究者チームは、パラジウムの断片で癌細胞を効果的に標的にする方法を開発した。

パラジウムはモーターや電子機器の製造や石油産業における主要な金属成分であるが、その金属が癌治療に応用できるのではと長年にわたって研究され続けてきた。
しかしながら、研究者は金属の微小な破片を癌の患部に届ける方法を見いだせずにいたのだ。

研究チームは細胞間でタンパク質と遺伝物質を輸送する泡のようなポーチによるアプローチ法に目をつけた。
肺癌および神経膠腫関連細胞に由来する人工エキソソームを作成することで、研究者らは原発腫瘍および転移細胞にパラジウム触媒を送達できる分子シャトルシステムを構築したのだ。
パラジウム断片が細胞膜の中に入ると、化学療法薬を活性化させることができ、内部から癌細胞を破壊できるという。
つまり、パラジウムがより良い癌治療の触媒になる期待が持てるのだ。

 

癌はかつては不治の病とされてきた。
近年では早期発見、早期治療により完治や再発予防ができるようになったが、それでも癌の発見からわずかな期間で命を落とす人は絶えない。
また、癌治療に有効な化学療法は副作用のつらさなどでも知られている。
これは化学薬物が破壊したい癌細胞だけでなく、周囲の健常な細胞まで破壊してしまうことに起因している。

今回の研究の成果により、パラジウムを触媒として活用させることで、健康な細胞を傷つけることなく、癌細胞のみを標的にすることが可能となる。

癌細胞のみをターゲットにできるようになれば、より攻撃的な癌治療薬を使うことが可能となり、癌細胞の根絶や進行が進んだ段階でも治癒に向けた道が開けるかもしれない。
サラゴサ大学ヘスス・サンタマリア教授は、今回の研究成果は医療界にとって非常に刺激的な技術になると述べている。
癌患者につらい副作用の弊害を与えずに治療ができるようになれば、癌患者の生活も大きく変わるであろう。
体力的、肉体的だけでなく、精神的なストレスも多い薬物療法をより安心して受けられ、なおかつ、治る見込みを高めることができるからだ。

日本では死因のトップ原因が癌となっており、2人に1人の割合で罹患し、3人に1人の割合で死亡しているというデータがある。
2017年の調査データによれば、1年間で癌を患って亡くなった人は37万3334人で、死亡総数の27.9%を占めており、1981年以降、36年間連続で死因のトップになっているのだ。
しかも、2017年では男性の癌で一番多いのが肺癌、女性は大腸癌となっている。

パラジウムによる負担が少なく、癌細胞のみを正確にターゲットにできる治療法が実用化されれば、日本人の癌死亡率の減少も期待できるかもしれない。
癌になったことで本人も家族もショックを受けるケースが多く、闘病生活の苦しみや心労は計り知れないものがある。
この負担を少しでも軽減し、癌罹患者に希望をもたらすことが期待されている。

参考:Precious metal flecks could be a catalyst for better cancer therapies.

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